レインズCSV廃止から4年、物件入力の現場はどう変わった?代替ツール比較と自動化の最前線

「また手入力か」——34歳・不動産事務が毎朝感じる絶望

佐藤美咲さん(仮名・34歳)は、従業員12名の不動産仲介会社で事務を担当して6年になる。

朝9時に出社すると、営業担当から届いた物件資料の束がデスクに積まれている。マイソクと呼ばれるA4の物件概要書が15枚。これを1枚ずつ見ながら、SUUMO、LIFULL HOME’S、at homeの3つのポータルサイトに手入力していく。

所在地、最寄駅、徒歩分数、賃料、管理費、敷金、礼金、間取り、専有面積、築年数、構造、階数、設備——1件あたり入力項目は50以上。3サイト分を入力し終えるのに、1物件で約45分かかる。15件すべてを終えると、気づけば午後4時を回っている。

「2021年にレインズのCSV出力が廃止される前は、CSVデータをそのまま取り込めたんです。廃止されてからは、全部手で打ち直し。正直、毎日が憂鬱で……」

佐藤さんのような経験をしている不動産事務担当者は、決して少なくない。

レインズCSV廃止が不動産会社に残した傷跡

2022年1月、東日本・中部・近畿・西日本の4機構が共通システムへ移行し、レインズのCSVデータ出力機能が全国的に廃止された。廃止の理由は「二次利用等の不正利用防止」とされている(出典:不動産流通機構)。

しかし、この変更は現場に大きな負担を強いた。

廃止前後の業務量変化:

項目CSV出力時代廃止後(手入力)
1物件の登録時間5〜10分30〜50分
1日の処理可能件数30〜40件8〜12件
月間の入力工数約20時間約100時間

不動産業界の構造が、この問題をさらに深刻にしている。宅建業者数は全国で約13万社(令和6年3月末時点、出典:不動産流通推進センター「不動産業統計集2025」)。そのうち従業者10名未満の事業所が全体の9割以上を占める。つまり、佐藤さんのように「事務1人で物件入力を全部回している」会社が大半なのだ。

物件入力がめんどくさい——放置すると年間いくら失うのか

「物件入力 めんどくさい」「レインズ 物件登録 時間かかる」——こうした検索が増えているのには理由がある。手入力の放置コストを試算してみよう。

年間コスト試算(従業員10名の仲介会社の場合):

  • 1日あたり新規物件登録:10件
  • 1件あたり手入力時間:40分(3ポータル分)
  • 1日の入力工数:約6.7時間
  • 月間入力工数:約134時間(月20営業日)
  • 年間入力工数:約1,608時間
  • 事務担当者の時給を1,500円とすると:年間約241万円

この241万円は「何も生み出さない作業」に消えている。営業担当が入力を兼務している会社では、さらに深刻だ。物件入力に費やす時間は、本来なら顧客対応や内見に使えたはずの時間だからだ。

イタンジ株式会社と不動産テック企業7社の共同調査「不動産業界のDX推進状況調査 2025」によれば、98.6%の不動産会社が「DXを推進すべき」と回答している一方、実際に取り組んでいる企業は68.0%にとどまる(出典:イタンジ プレスリリース)。必要性は感じているのに動けない——不動産業界のIT化の遅れを象徴する数字だ。

レインズCSV代替ツール比較——いま選べる3つのアプローチ

CSV廃止後、現場の課題を解決するために複数のツール・サービスが登場した。大きく3つのアプローチに分かれる。

1. RPA型:入力速いもん(株式会社iimon)

業者間流通サイトの物件情報を自動取得し、ポータルサイトへ最短2クリックで入力できるRPAツール。

  • 料金:月額5,500円(税込)〜。他の「速いもんシリーズ」と併用で割引あり
  • 対応ポータル:SUUMO、LIFULL HOME’S、at homeほか主要サイト
  • 導入効果:入力時間75%削減。1日10件→30件以上の処理が可能に
  • 月間継続率:99.2%
  • 特徴:導入がChrome拡張で手軽。既存の業務フローを大きく変えずに始められる

出典:iimon公式サイト

2. AI-OCR型:いえらぶCLOUD(いえらぶGROUP)

マイソク(物件概要書)をアップロードすると、AI-OCRが所在地・賃料・間取り等を自動抽出。仲介業務全体をカバーするSaaS型システム。

  • 料金:要問合せ(月額制、物件数に応じた段階料金)
  • 対応ポータル:SUUMO、LIFULL HOME’S、at home、Yahoo!不動産ほか
  • 導入効果:物件登録時間を最短5分に短縮(30分→5分)
  • 特徴:物件入力だけでなく、顧客管理・反響管理・契約管理まで一元化。AI-OCRに加えてコメント自動生成機能も搭載

出典:いえらぶCLOUD公式

3. AI-OCR+生成AI型:日本情報クリエイト

AI-OCRで物件資料から文字情報を抽出し、住所・賃料・管理費・間取り・アクセス・設備情報などに自動振り分け。さらにAI間取り図自動作成機能も搭載。

  • 料金:要問合せ(既存の不動産クラウドサービスのオプション)
  • 導入効果:登録作業時間を最大80%削減
  • 特徴:間取り図の読み取り→作図ソフト編集可能データへの自動変換が可能。東京建物不動産販売との実績あり

出典:日本情報クリエイト プレスリリーストランスコスモス導入事例

ポータルサイト一括登録も忘れずに

物件の入力だけでなく、複数ポータルへの「一括登録(コンバーター)」も重要なピースだ。

  • 不動産コンバートR:SUUMO・HOME’S・at homeへの一括入稿
  • オートライター(レックアイ):物件数・連動サイト数に関係なく月額19,800円の定額制
  • みらいえ:4大ポータルサイトに最短2時間ごとの自動連動

出典:いえーる住宅研究所 コンバーター比較2025

Before/After——自動化で現場はこう変わる

冒頭の佐藤さんのケースで、AI-OCR+コンバーターを導入した場合のシミュレーションを見てみよう。

指標Before(手入力)After(自動化後)
1物件の登録時間45分5〜8分
15件の処理時間約11時間約1.5時間
月間入力工数約134時間約20時間
年間入力工数約1,608時間約240時間
年間コスト(時給1,500円)約241万円約36万円
年間削減額約205万円

削減された年間1,368時間は、内見対応なら年間約680件分に相当する。「入力作業がなくなった分、午前中に内見を2件入れられるようになった」という声は、導入企業でよく聞かれるパターンだ。

不動産ポータルサイト一括登録への最初の一歩

「どのツールがいいか分からない」「うちの規模で元が取れるのか不安」——そんな方に、明日からできるアクションを1つ提案する。

まず「入力速いもん」のChrome拡張を試す。

理由はシンプルだ。月額5,500円からと低コストで、Chrome拡張をインストールするだけで始められる。既存の業務フローを変える必要がない。合わなければすぐ解約できる。

1件の物件を入力してみて「これは使える」と感じたら、次のステップとしてコンバーター(一括登録ツール)やAI-OCR搭載のSaaSを検討すればいい。

物件入力の自動化、まずは工数を可視化するところから

不動産業界のDXは「やるべきだと分かっている」フェーズから「実際にやる」フェーズに移りつつある。2025年の調査では、DX導入企業の76.2%が効果を実感している(出典:イタンジ DX推進状況調査2025)。

まだ手入力で物件登録をしている会社は、まず自社の入力工数を計算してみてほしい。「1件何分×月何件=月何時間」を出すだけで、投資判断の材料になる。

カイゼンタイムズでは、物件入力の工数と削減効果を試算できる**「不動産DXコスト計算シート」**を無料で配布しています。自社の数字を入れるだけで、年間の削減可能額が分かります。

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